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仕事の帰り、肌寒くなったねえと会話を交わしながら、歩く秋の夜道。

彼女とあなたは仲がいいものの、あともう一つの何かが足りないと感じています。

友達以上恋人未満の、ため息をつきたくなるじれったさも感じながら、あなたはふと夜空を見上げます。

ビルの間からかすかにみえる星。あるのかないのかわからないその光はまるで自分たちの間の恋心のよう。

「あのあたりにペガスス座があるはずなんだけどなぁ」

つぶやくあなたに、隣を歩く彼女が顔をあげます。

「星座なんかわかるんだ」

意外そうに、でも少し興味をそそられたように東の空を見上げる彼女。都会の明るさに負けてあるのかないのかわからない星に目を凝らしています。

「うーんやっぱり見えないね」

よく見ようとして目じりに人差し指を当てながら残念そうにつぶやく彼女。

そのすっきりとした横顔を見ながら、あなたは星座の特徴と神話についてゆっくりと語りだします。

ペガスス座の特徴と神話

「秋の星座をみつけるには、ペガスス座をまず探すといいんだよ」

ほぼ真上の空を指さし、秋の大四辺形とよばれる大きな四角形の4点をたどります。

「あれがペガサスの胴体。東から夜空を駆け昇っていくんだ」

星座はその上半身のみを描いています。

ちなみにペガサスは英語読みで、星座の名前はラテン語のペガスス座になります。

「勇者ペルセウスがメデューサを倒した時に、このペガサスが生まれ出たんだよ。ペルセウスを乗せてアンドロメダ姫を助けたり、勇者ベレロポーンを乗せて、火を吐く怪物キメラを倒したりもしたんだ。
そのあと神になりたがったベレロポーンを乗せたまま天に向かったけど、ゼウスに打たれてベレロポーンは死んじゃって、ペガサスはそのまま天に昇って星座になったんだよ。」

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カシオペヤ座の特徴と神話

次に北の空に指を向けます。

「あれがカシオペヤ座。わかりにくいけど、エチオピアの王妃カシオペヤのかたちなんだ。」

アルファベットのWのかたちに五つの星が並んでいます。

常に北の空にある北極星の周りをまわっている星座で、北半球からはほぼ地平線に沈むところは見えません。

「カシオペヤ王妃はものすごく美しくてね、その娘のアンドロメダ王女もとっても美しかったんだよ。そのせいでちょっと誇り高ぶってしまって海の王ポセイドンを怒らせてしまったんだ。
カシオペヤ座が沈まないのは、ポセイドンが海に入るのを許さないからって言われているよ。」

そして北のカシオペヤ座から、指で大きく南に向けて円を描きます。

「カシオペヤ座はちょうど天の川の中にあるんだ。あそこから南に向けてが天の川だよ。」

みなみのうお座の特徴と神話

「南の空には一番明るい星が一個あるんだ。」

秋の空にはそれほど明るい星はなく、南の低い位置にある一等星は目立ちます。

「あれはフォーマルハウトっていう星で、みなみのうお座の下唇になる。」

みなみのうお座は、南を背中にして空に向かって仰向けになっています。西が尾びれになります。

「みなみのうお座の上にはみずがめ座があって、その水瓶から落ちているお酒を飲んでいるんだよ。愛の女神アフロディーテがナイル川のほとりで、ほかの神々と宴を楽しんでいたときに、怪物デュホーンが現れたんだ。神々はいろんな姿に変身して川に飛び込んで逃げたんだけど、アフロディーテが変身したのが、このみなみのうお座だよ。」

アンドロメダ座の特徴と神話

一番初めに指さしたペガスス座、秋の大四辺形に視線をもどします。

「ペガススのお尻のあたりの星がアンドロメダ座の頭になるんだ。さっき話したカシオペヤ王妃の娘アンドロメダ王女の形がアルファベットのAの形でかたどられているよ。」

東が頭で、北に向けて足を広げているようなAの形の星をなぞります。

「カシオペヤ王妃の美しさ自慢に怒り立ったポセイドンは、くじらの化け物ティアマトを放ったんだ。そしてアンドロメダ王女はその生贄にされてしまった。
でもそこにペガサスに乗った勇者ペルセウスが現れたんだ。化け物ティアマトを倒し、二人は結婚して幸せにくらしたんだよ。」

くじら座の特徴と神話

「そして、その倒されたくじらの化け物ティアマトも星座になっているよ。くじら座だ。」

ペガスス座の東の辺を指さし、そこから南の方向へ指を動かします。南側にある明るい星がくじら座のしっぽになります。

しっぽから東のほうに胴体、頭があります。頭の部分は五つの星が、少し歪んでいますが五角形に並んでいます。

「アンドロメダ王女を丸呑みにしようとしてた時に、勇者ペルセウスが現れた。持っていたメデューサの首を見てしまって石になり、海に沈んでしまったんだ。」

やぎ座の特徴と神話

「さっき話した、みなみのうお座の少し西の上にはやぎ座があるよ。」

南の低い位置の一等星フォーマルハウトを指差し、そこから西側の斜め上にある逆三角形の星座です。

まわりは暗い星が多いので、山羊座の3つの星はわりと見つけやすいです。西の角がヤギの頭、東の角が魚のしっぽになっています。

「ナイル川のほとりの神々の宴に、上半身は人間で下半身はヤギの姿をした牧神パーンもいたんだ。さっき話したように怪物デュホーンが現れたとき、アフロディーテは魚に変身して逃げた。パーンは焦って上半身をヤギ、下半身を魚に変えて川に飛び込んだんだ。
その姿があまりに滑稽だったから、記念に星座にされちゃったんだってさ。」

まとめ

あなたは、ちょっと話しすぎちゃったかなぁと彼女の様子を見やります。

彼女はビルの向こうにある夜空の星を想像するように、上を見上げていました。

「すごいねえ。ギリシャ神話もこうやって聞くと楽しいね。」

笑いながらこちらを向いた彼女の頬は、少し紅潮しています。そしてちょっと首をかしげてこんなことを口にします。

「ね、こんど星が見えるところに旅行に行こうよ。…ふたりでさ」

あなたはもちろんっと頷きながら、密かに心の中で感謝します。

秋の夜空を彩る神話に登場する神々に。一歩前進しそうなふたりの関係に期待を抱きながら。

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